欠陥マンションが再生産される原因

2011.11.04

本来、建築士は建物を使用する建築主から依頼を受けて設計し、建設会社が設計図どおりに建設していくのを監理する役割を担う。さらには、建物が建築主だけに帰属するものではなく、社会的な存在であることから、建築主からも自由であることを求められる。しかし、構造強度偽装事件では、姉歯元建築士だけでなく、彼に構造設計を委託した元請け設計事務所もまた、企画者、施工者の隷属下にあった。建築士が建物を実際に使う人から依頼を受けて設計するという本来の姿を変えて、企画者、施工者である企業に隷属する関係は今回の事件に限ったことではない。

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もともと設計事務所は零細なものが多く、継続して仕事を受託できる企業への依存度が高い。この関係はマンション建設業界ではごく当たり前のことになっている。マンションは一般の建築物とは異なって、住み手が協働して建物を造っていくコーポラティブなどの手法をとる場合を除いて、住み手が建築主になることはなく、デベロッパーや、建設会社が建築主となる。そこで、設計事務所はおのずからデベロッパーや建設会社の下請けとなる、つまり言い換えると隷属下に置かれる。実はここに、欠陥マンションが再生産され続ける根源的な問題が潜んでいる。東京南西部の大規模ニュータウンでの欠陥問題は、建築家や設計事務所が、分譲主である国の機関の隷属下にあったとはいわないが、設計者が建設過程の監理をする仕組みになっていなかった点においては同じである。つまり、姉歯元建築士による構造強度偽装事件は、マンション供給における生産構造上の歪みがさらに大きく口を開く事態を招いたといえる。歪みを助長したのは、長引く不況のあおりを受けて限界まできたコスト削減、年々深まる利益追求を第一義にする経済効率主義である。一部で良識ある設計事務所、また健全な経営を目指す建設会社は、マンション建設に手を染めない、という暗黙の風潮もあった。事件の背景はこれら一連の建築業界の事情にあり、今後もさまざまな欠陥問題が再発しないという保証はどこにもない。安全なマンションを見分けることの難しさは、実はここに原因が潜んでいるのである。





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